“蒲公英根”ってご存知ですか?
蒲公英根(ほ・こう・えい・こん)とは、漢方では“たんぽぽの根”のこと。いまから1300年ぐらい前に中国で出版された「新修本草=しん・しゅう・ほん・ぞう」という、中国の伝統医学の薬について書かれた本に“蒲公英根”がすでに登場しています。
“解熱”、“抗炎症”、“利尿”の効果があり、“女性の乳腺炎に良し”とされていて、大昔から代表的な漢方薬のひとつだったんですね。
たんぽぽ茶は、“蒲公英根=たんぽぽの根”からつくられたお茶、漢方由来の飲み物です。漢方というと、「中国産?」って思われがちですが、これからご紹介するたんぽぽ茶はれっきとした純国産。
長野県東御(とうみ)市の、柳澤正春・恵子ご夫婦が営む“健滋:けんじ”さんというたんぽぽ農家のたんぽぽ畑で育てた“たんぽぽの根”を、静岡県の焙煎工場で加工してつくられています。
“たんぽぽの根”を焙煎してつくられたのが“たんぽぽ茶”や“たんぽぽコーヒー”。ノンカフェインでリラックス効果もあるので、とくに妊娠中のご婦人に愛用者が多い飲み物です。
新しい命を授かるという、女性にとって人生でもとても大切な時期に、安心・安全を気遣うのは当然の成り行き。多くの方々が「国産」を選ばれます。
ただ、「国産」をうたっている“たんぽぽ茶”や“たんぽぽコーヒー”のパッケージの裏などに記載されている「原料原産地」を意識している方は少ないのではないでしょうか。
世の中には、「国産」の“たんぽぽ茶”や“たんぽぽコーヒー”はいっぱいありますが、パッケージの表示をよく見てください。「原産国名」が“中国”だったり“ポーランド”だったり、もしくは、なにも国名が書かれていない場合があると思います。
現時点では、外国から輸入された“たんぽぽの根”を日本国内で加工すれば「国産」と称することが許されており、原料産地の表示がなくてもOKです。
なので、“たんぽぽの根”を日本で生産して、国内で製造している“健滋”さんの純国産たんぽぽ茶は、ごくごく少数派といえます。
しかも、“健滋” さんでは、「種取り」→「育苗=いくびょう:苗を育てる」→「施肥=せひ:有機肥料をまく」→「定植=ていしょく:苗を植える」→「収穫」→「仕分け」→「乾燥」という工程を経て“たんぽぽの根”を生産。ご夫婦2人きりでの作業なので、採れる量も限られています。
“たんぽぽ畑”のある“東御市”は漢方の産地。
さて、日本でも珍しいたんぽぽ畑のある東御市はどんなところなんでしょう。
東御市は、長野県の東部に位置していて、おもな産業は農業です。特産物は“くるみ”や“ブドウ”などがありますが、“薬用人参”の有名な産地でもあります。
“薬用人参”は“高麗人参”とも呼ばれ、日本では福島県の会津地方と島根県の松江市大根島、そして、ここ長野県の東信地域が三大産地です。この3つの地域に共通する土地の条件のひとつが“水はけの良さ”。土壌水分は50~60%が適量だといわれています。
東御市は、浅間山の火山灰がもたらした適度に柔らかい土壌で南向きの斜面の土地が多く、とても水はけが良いという地の利があって良質な“高麗人参”を多く産出しているのです。
“薬用人参”と“たんぽぽの根”は、ともに根を利用するものであり、同じ漢方薬の原料。“薬用人参”の産地にある“健滋”さんのたんぽぽ畑で良質な“たんぽぽの根”が採れない理由はありません。
品質と焙煎方法の差が味や香りの良さに出ています。
日本茶は、「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」というコトバがあるように、静岡、京都、埼玉が三大産地。土壌や気候の違いが、緑茶の品質の差につながっているんでしょうね。
たんぽぽ茶も同じで、品質によって味が変わってきます。外国産より国産、国産のなかでも薬用人参の産地である東御市で採れた高品質の“たんぽぽの根”を使ったものが美味しいと評判です。
やはり、ゴボウなど普通の野菜と同じように種から苗にして、たんぽぽ専用の畑で手間暇かけて育てた結果が味に出ているのだと思います。
原料である“たんぽぽの根”の品質の良さはもちろんですが、“健滋”さんのたんぽぽ茶は焙煎方法にも美味しさの秘密があるんです。
“健滋”さんでは、とても難しいとされる“たんぽぽの根”の焙煎にチャレンジして、8年の試行錯誤の末に“ダブル焙煎”という方法にたどり着きました。
1回目は根を荒くカットして焙煎、さらに細かくして2回目を行う“ダブル焙煎方式”が、味も香りも色もいい、美味しいたんぽぽ茶を生み出しているのです。
まずは、品質のいい日本産のたんぽぽの根を原料にして、お茶処の静岡で焙煎した“根っから国産のたんぽぽ茶”を、ぜひ召し上がってみてください。
ほかの「国産」とは、ちょっと次元の違う味がすると思います。
投稿者:農の匠の玉手箱事務局